「振袖」の意味を教えて頂きました。
令和3年の成人の日。
成人の節目を迎えられました、
新成人の皆さま、またご家族様さま、
誠におめでとうございます。
思う様にならない状況下でしたが、
今日の門出が善き日となる事を心からお祈りいたします。
当店でも何名様か、成人の日の準備をさせて頂き、
そのお一人さまが、着姿を見せにご来店下さいました。
お嬢様のお好みと個性に合わせた、
無地の振袖。
無地振袖を誂えるにあたり、
各種の白生地から吟味し始めたのが、初夏の頃でした。
赤とか、花柄とかはお好みでない事は、
前々からお母様より聞いていたのと、
ただし、色だけが前面に出ず、
振袖らしい格式を白生地から持たせたいご家族様の意向のあり、
古典的な地模様のものを中心に、「色」が活きる生地を選びました。
色見本帳から、好みの色を抜き取り、
お好みと似寄りだった妻の色無地を着て頂き、
そこに色見本を当てて、顔映りを確かめながら、
最良の一色を選んでいきました。
染屋さんにも、十二分にご意向を伝え、
万全を期して染め出しをしましたが、
今となれば、ここが一番緊張した仕事でした。
染め上がりをご確認頂いたのち、
もうひとつの個性を引き立てるために、
お嬢様がデザインされた花紋をひとつ、背に入れました。
デザイン画を基に、刺繍糸を実際に取り寄せて、
染め上がりの生地の上での映え具合を、
一色ごと確認し、刺繍の仕事出し。
出来上がりの写真を撮り忘れましたが、
丁寧な手刺繍がひとつ入る事で、
振袖の特別感と格が仕上がったと思います。
その後、帯選びと、小物選び。
無事、年内に仕立て上がり、
今日の善き日を迎える事となりました。
ご納品の際、
お母様から初めて聞かせて頂いたお言葉に、
「振袖の意味」を痛感しました。
詳しくは書きませんが、
振袖は成人式のための衣裳ではなく、
お嬢様やご家族様が無事、ハレの時を迎える、
祝い、安寧な気持ちを込めて誂える衣裳。
その暖かな想いと願いを込めて、
一着の振袖を誂えるという事を、
改めて、今回の振袖を別誂えする中で感じ、
学ばせて頂きました。
こうしたお誂えの振袖から、
お母様がお召しになられた振袖、
セットでご購入された振袖や、
レンタルをされた振袖まで、
きっと、そのひとつひとつの振袖に、
ひとつひとつ違った、親が子を想う気持ちが込められており、
そのハレのひとときのひとつとして、
今日の善き日があるのだと思いますし、
そうした想いの一助をさせて頂けた事に、
きもの屋としての誇りと喜びが在ります。
先にも書いた様に、
すべてが思うままにならなかった、
今年の成人の日。
今日という一日は終わりますが、
大切な想いは振袖と共に残り続け、
その想いが新成人の皆さまにとって、
これから歩まれていく人生の、
かけがえのないひとつとなればと、切に願っております。
I様、誠にありがとうございました。
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