小雨降りしきる午後に向きあう、別誂えへの想い。
小雨降りしきる午後。
こうして雨晴れ繰り返しながら梅雨へとなっていき、
あの暑い夏がやって来ると思うと、
この季節外れの肌寒さも恋しいものに感じてきます。
そんな一日、
京都から荷を解いて、図案と向き合っています。
タイミングよくなのか、雨傘をモチーフにした染帯の図案。
来年の今頃に手元に届けばと思っての別誂え品でして、
決して急ぎの品ではないのですが、
こんな小雨降りしきる時にこそ結んで欲しい一本を創ろうと考えているので、
外の様子を見ながら、図面とにらめっこしています。
この柄と対面するのは、約10年ぶり。
以前もこの同じ柄の帯を持っており、
その時は問屋さんの展示会で一目惚れをして仕入れをした一本で、
その一本もすでに同じ想いを持っていただけたお客様へとお見分け済み。
「憂鬱な雨降りの時のきものでのお出掛けが、この一本があれば楽しくなりそう」
と笑顔でお見分けいただき、
今でも愛用して下さっている一本の様です。
この帯は型染めなので再現性は高く、
機会があればもう一本とも思っていたのですが、
なかなか気持ちが動く様なタイミングと帯生地に出逢う事もなく、
また10年前の自分の力量では、
同柄であっても誂えで注文する事は考えにもなく、
そんな状況も相まり、特段急ぐことも無いまま今に至っていました。
別誂えは、
今となっては普通にご相談から承る事のできるようになりました。
今も数件、別誂えのご注文を頂いており、
その仕事が進行中なのですが、
初めて染屋さんや問屋さんにその注文をした時の緊張感は、
今でも心の奥底に残っています。
大きな失敗や、お客様にご迷惑をお掛けすることもなく、
こうして当たり前の様にこなせるようになれたのも、
信頼の出来る問屋さんや染屋さんが身近にいて色々と教えてもらえることと、
何より当店の事を信用してお任せ下さる、お客様あっての事と感じております。
図案に付けてあった色見本を見ながら、想像を膨らまし、
美濃幸好みの一本に仕上げていくこと、
そして、それが独りよがりならず共感をしていただける様なものに仕上げていくこと。
色々なことに想いを馳せながら、
またこうして大好きなモチーフと向き合う時間を持てる事を、
心から楽しみ、あらゆる妄想を膨らましております。
もちろん10年前のものと同じものを作るつもりはなく、
その帯をお見分け下さったお客様でさえ欲しくなってもらえるような、
魅力あふれる一本になれば何よりも嬉しいこと。
今の自分の感覚と感性を頼りに、
ご縁のあった皆さまのお心に届く様な一本に仕上げていきたいと思っています。
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