男のきものを嗜む。「一枚の布と過ごす素敵な日々」
もう10年来着続けている、
藤井絞さんのたつ巻き絞りの一着。
暑い夏になると出番がやってきます。
当初はお客様から「ピスタチオ」と名付けられるくらい、
鮮やかな若草色をしていましたが、
10年の月日を経て、
日々の着用と自宅での洗濯を重ねるうちに、
自然と落ち着いた抹茶色となりました。
しっかりとした綿麻生地を、縦方向に絞り上げ、
その柄がシンプルかつモダンな雰囲気を作り出してくれる
たつ巻き絞りの一着。
最初はその色目から、どこか気恥ずかしさがあったのですが、
そんなものは着慣れれば何のこともなく、
今や、この色を着れる楽しみの方が上回っています。
今時分、夏の頃にしか袖を通さない一着ではありますが、
1週間に1回は袖を通しており、
ざっと計算しても200日近い日数を着て、
加えて、自宅での洗濯(洗濯機使用)も100回以上している訳ですが、
まだまだ生地の精はあり元気そのもの。
経年変化はもちろんあり、先に書いた色の変化に加えて、
当初あった麻の硬さはまったく無く、
今は洗い込んだ木綿の風合いそのもの。
若い頃に比べると馬力も尖りもなくなりましたが、
年相応の味わいが出てきた、
アラフィフの私と同じ様な感じがします♪
所々のへたりはありつつも、
体への馴染みはとても良く、
布としての脂が乗っている感じがします。
色目の変化も同様。
10年前のあのピスタチオグリーンを今着ようとは思いませんし、
多分に合う事もなかったはず。
私が一年一年歳を取るのと同じように、
この布も一年ごと変化をしていき、
その時々の私に似合う色になっているのだと思います。
同志のようで、友のような関係。
そんな出逢いが私は好きですし、
着物に関わらず自身の人生において、
日々そうした素敵な出逢いを探しているのだと、
この歳になり感じれる様になりました。
自然と思い出を共有しているので、
10年前に誂えた時の嬉しい気持ちは今でも思い出し、
この着物を通して出逢った皆さまの事も同時に思い出します。
きもの屋として、
常に新しいものをご提案し、ご購入いただき、
そしてそのサイクルを常に重ねていかなければ、
自身の商売だけでなく、産地や作り手を支える事もままならないで、
私自身、こうして一枚の綿麻の布を10年間も着続けていては、
それの実現はほど遠い訳です。
でも、このひとつのものを愛でる感覚はかけがえのないもので、
当店を頼りにお越し下さる方や、こうしたコラムをご覧下さっている皆様には、
きっと共感していただける感覚なはずです。
何よりも、こんなにお気に入りの布に出会えた事に感謝をして、
次の10年に向けて楽しい月日を重ねていきたいと思いますし、
その想いを共にして下さる皆様とのご縁を広げていきたいと思います。
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