男のきものを嗜む。「初春に結ぶ綴れ角帯から祖父を感じるひととき。」
新年に向かう自身の着姿を紹介いたします。
6日の商い初めから、
この様なコーディネートにて皆さまのご来店をお待ちしております。
実にシンプルな、私らしいコーディネート。
昨年末、娘の七五三の時におろした濃紺色の無地紬に
チャコールグレー御召羽織を合わせ、
角帯は祖父から譲り受けた綴織の一本を結びました。
紺系と茶系との相性はよく、
またそれぞれの色の個性が程よく立ってくれます。
襟元は、無地紬を薄灰色に染め上げた半襟と付け、
少しフォーマルに寄せた襟元に。
これが普通の半襟にしてしまうと、
私的には当たり前のものになってしまうので、
こうして紬生地を使うだけで、
一気に長着との相性が良くなります。
足元は襟元と似寄りの色目を。
足袋は日によって変わりますが、
履物は薄灰色の鼻緒を挿げた少し高めの草履を選びました。
日ごろ履いている雪駄と比べて高さがある分、
いつも以上に気を付けて歩かないといけなく、
走ったりするには不向きではありますが、
初春くらい大人しく、そして和装らしさを表すためにも、
多少慣れないくらいが私にとって良いように思います。
帯周りはこのような雰囲気に。
羽織紐は長着と同系色の紺色。
水玉模様の様なドット柄を組み上げたもので、
江戸組紐の名店「中村正」さんが手掛けた羽織紐になります。
もっちりとした肉厚でありながらもしなやかな組み上がりと、
ドットの配色に惚れて手にしたもの。
フォーマルな雰囲気と遊び心を併せ持った一組で、
お気に入りの羽織紐となっています。
そして、角帯。
先述の通り、祖父の箪笥に眠っていた一本で、
今は私が事あるごとに結んでいます。
綴織の一本は、なかなか手応えのあるもの。
しっかりとした結び心地が身上なのですが、
綴織が織り上がる組織上、帯幅にかけて横方向には動くのですが、
縦方向には織り上がった糸同士がフィットして、
ほとんど動くことがありません。
なので結ぶ際には一巻き一巻き、
帯位置を決めて結ばないといけない一本。
締め心地が緩いからと帯を引っ張ったとしても、
微動だにしないほどしっかりと糸同士がかみ合ってしまいます。
そのかわり一度結んでしまえば、
開店から閉店までどのようにしても解けず崩れない一本であり、
結んでいる今日も一度も直すことなく夜を迎えました。
この一本を結ぶたびに、祖父の事を想います。
私がきもの美濃幸に戻った時には、
当の昔に他界しており、
祖父と着物について、商いについて話したことはなく、
思い浮かべるのは小さい頃に祖父の膝の上に座り、
そこから見上げた彼の笑顔と、いつも口にしていた仁丹のにおいだけ。
でも毎朝、こうしてこの帯を結ぶたびに、
出来なった祖父からの教えを乞うている様な気持ちにさせてくれる、
私にとって大切な一本です。
ひとつひとつ、大切に。
そんな事を教えてもらい、気づかせてもらえる、
新年にこそ結びたい一本。
今年もそんな当たり前のことを
しっかりと積み重ねていく一年にしたいと思います。
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