男のきものを嗜む。「単衣の季節を考える」
日々、仕事着として、
そして何より自分自身の楽しみとして、
着物に袖を通している私。
きもの美濃幸で仕事をし始めた10年ほど前は、
きもの屋としての使命感の様な感覚で、義務感の様に、
毎日着物を着ることを仕事の様に続けていましたが、
どこかでそれに違和感を感じ、
何より大切なことは自分らしく居られる衣服で日々を過ごしたいと思うようになり、
その選択肢として「仕事の日は着物が着たい」という様になりました。
対お客様、対店主として、
店や仕事先でお会いする皆さまにとって、
「私=和装」が当たり前なのですが、
オフタイムは洋装の事がほとんどなので、
時々街ですれ違っても、ほぼ100%気付かれることはありませんし、
時々、そうした皆さまにお声掛けをすると、
一瞬戸惑われた先に「美濃幸さんね!!」と仰っていただけるほど、
私のアイデンティティの大多数を占めるものが和装であるという事を、
皆さまの反応から気付かされ、その面白さを感じていたりします。
仕事で着るといっても、ただ何でも着ればいいとは思ってはおらず、
ファッションとしての和装の良さ、格好良さ、自分らしさをそれで表現したく、
日々、手持ちの着物や帯や小物とにらめっこをして、
その日その日の気候や天気とも相談をしながら今日のコーディネイトを決める訳ですが、
今週に入ってようやく、単衣の着物に袖を通し始めました!!
その着姿がこちら。

20年近く、洗い張りをしながら愛用している米澤の御召生地に、
祖父から譲り受けた、焦げ茶色に一本縞が入った角帯を合わせてみました。
単衣の季節は、変わってきました。
長く言われているきもの暦でいえば、
単衣物を纏う月日は「6月と9月」の二つ月のみとされ、
その月々の始めと終わりの頃は、次の衣更えにシフトしていくのが本来。
10月の袷の季節が見えている今時分であれば、
「一足早く袷のコーディネイトを楽しんでいます」的なコラムを書く事が、
きもの専門店の本道の様にも思いますが、
それも過去のものになってきている様に感じています。
着物の仲間内でよく話題となる、
「単衣を何時まで着る・いつ着る問題」に正解はなく、
2代目女将である母は、どれだけ暑くとも頑なに暦に合わせた着物を選んで着ていました。
(お客様にそれを強要する事は決してなかったですが)
古くから言われ続けている事にはそれなりの理由があり、
それを知るには長年の経験は不可欠なもの。
きもの専門店の女将としての矜持であり、
それを伝えるひとりとして長年、きもの屋の店主として商いを重ねて、
その先にある胸を張れる着物を纏う事の大切さは母にしかわからない境地ですし、
それを身近で感じる事が出来た私自身にとっても、
一概なことに思考が縛られない様な土台になっています。
そうした二代目女将が身近にいたからこそ、
三代目である私は、古くからのしきたりや習慣に敬意を払いつつも、
今、この変わりある気候の中でも着物をお楽しみいただく皆さまにとって、
常に最良の一着をご提案したいと思っています。
そのこころは、「自分らしく装う楽しみ」。
着物を着ることが古くからの思考に縛られたものではなく、
自分らしさを表現するものであり、それが心地好く楽しいものであって欲しい。
先にも書いた通り、単衣の季節を考えるにひとつの答えはありませんし、
ハレとケによってもその考え方は大きく変わりますが、
単衣を何時着るのか、単衣をどのように楽しむのかの一番の選択肢は、
「自分らしく居られる着物」という事を旨にしてもらえたらと願っています。
先週までは結ぶ気にもなれなかった、
祖父から譲り受けた濃色の角帯も心地好く感じる季節となりました。

「着物と在る時間が心地好く、誇らしい時間であるように」
きもの美濃幸が大切にしているこの想いとともに、
皆さまにとって、来たる季節が素敵なひとときとなります様に。
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