男のきものを嗜む。「袷の重さが心地好い秋の頃」
11月朔日。
秋を通り越して冬を感じる今になって、
ようやく袷に袖を通すようになりました。
きもの暦もへったくれもなく、季節感もない状況ですが、
10月も初旬はとても袷を着る様な気候ではなく単衣で過ごし、
終わりが見えた頃にやっと、袷を着たみたいという気持ちになりました。
そんな今秋初の袷は何を着ようかと思い、
選んだ一着は紺色の無地紬に。
この様なスタイルとなりました。

私の定番、濃紺色の無地紬の長着に、
臙脂色を基調とした組紐角帯を合わせました。
半年以上振りの袷は心地好い。
その袷の着物の心地好さは、
適度な重さと、裾の落ち具合にあると私は感じています。
表生地と同じ長さの裏地が付けられた袷着物は、
それまでの季節に着ていた夏衣や単衣とは違い重量感があります。
肩山から裾に掛けて、
また袖下に向けて全身から感じる生地の重量感は、
袷の着物ならではの感覚で、
単衣から袷に衣替えをしたすぐの頃は、
この重量感が一瞬不快にも感じるのですが、
段々とそれも馴染み、適度な重さが全身に掛かる感覚が心地好く感じます。
また、その重量感があるからこそ裾もすとんと落ち、
単衣とは違う裾裁きの心地好さがあり、
これも着こなしていくと何とも心地好い感覚になります。
特に今日袖を通した無地紬は、
それなりの生地厚があるので重さもあり、
この心地好さを十二分に楽しめる一着。
単衣の頃は頻繁に直していた裾の乱れも少なく、
袷初日は秋風の心地好さも相まり、とても快適に過ごすことが出来ました。

こうした何気ない感覚もすぐに慣れ、
春が近づく頃には単衣が恋しくなることでしょう。
今在る季節を大好きな着物とともに過ごしていきながら、
日々の着物と在る時間を楽しんでいきたいと思います。
皆さまにとっても、素敵な袷の季節となります様に。
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