白大島の素材感が心地良い季節です。
ご来店のお客様と、
「最近は単衣の季節が長くなりましたね。」
という内容の会話が増え始める、
春を終えた、初夏に向かう頃の着物屋の店内。
先週のコラムでは、
「単衣の向く塩沢御召」をご紹介しましたが、
まだまだ、袷の着物が気持ちよい季節ですので、
今から単衣までに向く素材を今日はご紹介したいと思います。
きもの美濃幸が、
単衣に近い春袷の季節におすすめしたい、
カジュアル傾向のある織の着物はこちらの「白大島」。
色柄、素材感共に、陽気高まる季節の袷として、
とても心地良くお召頂ける一着に仕立て上がります。
大島紬は、
奄美大島、鹿児島県内、また一部宮崎県でも製織されている伝統的な織物で、
「泥染め」と言われる鉄分を多く含んだ奄美の泥で染め上げる鉄黒色の反物は、
着物を深くご存じではない方でも見た事や聞いた事があるのではと思います。
反面、この白大島は、
白薩摩という鹿児島県内で制作される伝統工芸品の陶器を作るものと同じ白土を、
下染の原料として使い、その糸を使って織り上げたもの。
ただのホワイトではない、
少しグレーというか、藤色がかった色が魅力のひとつです。
私が考える、「大島が春袷に向く理由」ですが、
大島紬は「紬」という名が付いていますが、現在は紬糸は使われておらず、
節のない生糸を使い、製織されています。
なので、滑らかな質感・素材感が、そのものの持ち味であり、
袷と言えども日中は暑い日も多い4~5月頃に、軽やかに着る事が出来ます。
また、単衣でも良いのですが、
この軽やかな素材感は裏地を付けてこそ本来の着心地が味わえるというのが、
私なりに何十年も着続けている上での感想。
色も、陽気高まる頃に発揮する白色で、
泥染の様に重すぎてしまう事もなく、見た目も軽やかにお楽しみ頂けます。
今回ご紹介しました白大島は、市松模様が織り込まれたもの。
反物の左右から大小になった市松が精密に織り上げられていて、
細かな絣織を旨とする大島の良さを存分に味わって頂けると思います。
合わせる帯は、この様なシンプルなものなので、
お好きなものをどの様にでも合わせられるのですが、
春先の季節感を持って、こんな塩瀬の九寸をコーディネート。
織の着物に染の帯が合う。
定番のコーディネートですが、
王道の組み合わせを楽しみ、遊び心も一緒に合わせて頂ける、
そんな組み合わせになりました。
一雨ごとに陽気が高まり、
暑さ寒さを繰り返しながら段々と、春から初夏へと季節は移ろいます。
春袷の楽しみは、裏地と共にある着物の質感を、
季節の中で楽しむことにあります。
気候に抗わず、楽しみながら、残り2か月を切った袷の季節を、
自分らしくお楽しみ下さいませ。
《掲載商品詳細》
白大島紬 違い市松柄 190,000円(税別・反物価格)
染の川勝 塩瀬九寸名古屋帯 唐花(絹100%) 170,000円(税別・反物価格)
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