軽やかな素材感と、季節を感じる愛らしさをともに。「九寸帯(名古屋帯)『夏~単衣向き・染の川勝・秋桜』」
今日は染の名店の一本をご紹介します。
九寸(名古屋帯)「染の川勝・夏~単衣・秋桜」
軽やかな夏帯地の上に、
大小散りばめられた秋桜が染め上げられた一本。
染の名店、京友禅の老舗「染の川勝」さんが手掛けた、
夏から単衣に向く九寸帯(名古屋帯)です。
透け感を抑えた紗の帯地を使い、
先述の通り夏の終わりから秋に向けて、
軽やかに結んで頂ける素材感を持った一本。
私は男性なので100%は知り得ませんが、
帯芯を入れてもその重量感はさほどではないので、
きっと心地好く、また軽やかに、
着物と共に在る時間をお過ごしいただける、
そんな一本になるかと思います。
染め柄は満開の「秋桜」たち。
型染を使い染め上げた柄は、
通し柄で染められているので、
結ぶ際にお太鼓や前腹の柄出しを気にせずに結べることも、
日常的にきものをお召しになられる女性にとっては、
重宝な一本になるかと思います。
紋紗生地の様な透け感をもった帯地は、
軽やかな雰囲気に。
その上に染め上げる秋桜は、
輪郭部分と一部は型染で染め付けを行い、
所々に挿し色として、
黄色やエメラルドグリーンは手挿しで染付が施され、
一見、白地のシンプルな帯に見えますが、
ひとつひとつ手のかかった仕上がりになっています。
名前にも感じが入っていますが、
秋桜といえば「秋の花」。
そして、鮮やかなピンクやオレンジを思い起こさせますが、
この帯はあえて、その花びらは無色に仕上げてあります。
特徴的な秋桜の色を、
こうして水色の輪郭だけにすることで、
あからさまにそれを連想させることがなくなり、
お召しになる場や季節も広がる事に繋がります。
また、帯〆や帯揚といった小物選びも幅が広がり、
お召しになる方の個性や、合わせる長着の色柄、折々に季節に合わせて、
より自分らしいコーディネートをお楽しみ頂けることでしょう。
前腹の様子はこちら。
お太鼓と同じ通し柄ですが、
縦横の向きが変わるだけで印象も変わって見えます。
きっと帯〆はどの様な色目も合いやすく、
秋桜を全面に意識した色を入れても良し。
帯自体が持つシンプルな印象をそのままにして、
同系色やモノトーン調にまとめても良し。
この一本に心を留めて下さった方が、
自分らしいスタイルで結び、
着物と共に在る季節を一本の帯とと共にお楽しみ頂けたら、
きもの屋として何よりも嬉しい事です。
季節を感じる花柄のお品は、
季節が限定されるので、使える期間が短くなるという点があります。
もちろん、そうしたタイムリーな季節感を、
お召しの着物や帯で楽しむ事は和装ならではの、
季節との過ごし方、楽しみ方ではありますが、
それが億劫というお気持ちもよくよくわかります。
そうしたどっちの良さもお楽しみ頂ける重宝な一本。
着物が好きな皆様のお役に立てたら嬉しい限りです。
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