和をたしなむ

2022.09.17更新 - 徒然なるままに

魔法の様に糸を績む手。

 

15~16日の二日間、

結城紬などの産地勉強に行っていました。

 

 

その初日、新幹線の車中で届いた訃報。

 

喜如嘉で芭蕉布を織り上げておられる、

人間国宝 平良敏子さんご逝去の報を、

産地勉強に同行して下さった、

紬問屋さんから聞きました。

 

 

ご高齢なことは知っており、

私が一生に一度だけ機会を頂き、

敏子さんにお会いしたのが2012年。

 

今から10年前の事であり、

その時に敏子さんから90歳とお聞きして、

そのお元気なお姿にびっくりしたのですが、

御年101歳で旅立たれたとの事です。

 

 

私自身、今なお染織について学びの旅を続けていますが、

10年前に喜如嘉の工房に伺った際の感動は、

今も鮮明に覚えています。

 

 

工房の隅で、静かに座り、黙々と手を動かされて、

見学によった私たちが近寄ると、

ふわっとした優しい笑顔で迎えてくださり、

 

 

芭蕉の茎から糸を作り出す、

糸績みの様子を見せて下さいました。

 

 

芭蕉布を織り上げる芭蕉の茎は、

バナナに良く似た植物で、

 

 

工房の横にある芭蕉の畑で、

芭蕉布を織るためのものを栽培されていました。

 

 

柔らかな芭蕉布の糸を作りために、

大きくなり過ぎて繊維が硬くならない様に、

丁寧に栽培をされている訳ですが、

それでも身丈ほどにもなる大きな植物でした。

 

 

この幹から繊維を取り出す訳ですが、

どこにでもある様な乾燥した革の様な繊維から、

芭蕉布の糸が績み出される光景に、

驚きを隠せませんでした。

 

 

ただの革の様な繊維が、敏子さんの手を通り、

そこを通って績み出てくる一本の糸は、

正に宝石の様な輝きを持った、

本当に美しい糸。

 

 

冗談ではなく、

敏子さんは魔法でも使っているだと、

感じずにはいられませんでした。

 

 

あの、魔法の様に糸を績む手は、

もうこの世にいないのだという事を想うと、

心から寂しく、喪失感を感じています。

 

 

10年前のこの沖縄での産地勉強が、

私とっての最初の産地勉強。

 

こうして訃報に触れた時にも産地勉強をしている事に、

私のきもの屋としての道を感じています。

 

 

過ぎゆく時代を感じながら、

しっかりと前を向いて、

日本の素晴らしい染織を伝える事が出来る、

きもの専門店を目指し、道を進んでいきたいと思います。

 

 

心からご冥福をお祈り申し上げます。

 

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