表地と裏地のバランス。
先月開催しました、「二年に一度の蔵出し市」もあって、
袷着物のお仕立てを数多く承った事もあり、
用意をしていた胴裏がなくなったので、発注をすることに。
先日、メーカーさんから到着しました。
当店で使用している胴裏は主に、
ぐんまレピアという国内工場で製織した胴裏生地を使っており、
絹の柔らかな質感のある、触っていて気持ちの良い胴裏です。
当店の場合、裏地に関して言えば、
八掛はお客様とご一緒に選び、時には色出しをして染めるのですが、
胴裏に関してはこちらに任せて頂いております。
大体は、一疋の長さで買わせて頂き、
お客様の着丈に合わせて女将がはさみを入れて切り分け、
反物と一緒に仕立て屋さんに渡しています。
表生地との添いが良くて、着心地の良いもの。
という事を基準に、
当店で扱わせて頂いている生地に、
しっくりと馴染むものがこちらでした。
ランクや価格でいえば、もっと良い生地もあるのですが、
先にも書いた通り、表地との相性が何より大切なので、
バランス的にはこれがちょうど良い感じ。
私の長着にも付けていますが、表地以上に肌に触れる事の多いこの胴裏の、
柔らかな触感は実に気持ちが良いものです。
ちなみに余談ですが、
こちらの胴裏には、この様なシールが貼ってあります。
「日本の絹」
と書かれたシール。
これだけ見ると、「100%国産の生地」の様に感じますが、
よく見ると、「日本で織ったもの」と表示されています。
そう、このシールは国内の工場で織られた生地に貼られているもので、
先に書いた「100%国産」のものは「純国産」という別のブランドタグがあり、
そのシールが貼られています。
明治時代は生糸の生産で財を成し、
殖産興業時代の日本最大の貿易品目だった絹も、
それは今や昔の話。
国内の養蚕業は衰退の一途をたどってしまい、
現在、国産の生糸生産量は全体の約5%未満と言われています。
今日本国内で流通している生糸のほとんどは、
中国産とブラジル産の生糸で、安価かつ、質の良い生糸と定評があります。
特にブラジルは、明治時代の日本~ブラジル移民の際、
優れた養蚕技術を持った人たちが日本から移り住み、
現在の礎を築いたといわれています。
時代が変わると、様式も変わり、価値観も変わり、
もちろん純国産へのあこがれや、無き時代への想いは募るのは心情ですが、
現代にあった優れた品質の物を国境を越えて手にする事が出来る事も、
そうした先人の皆さまあっての事だと、改めて思います。
この胴裏の反物もご覧頂ける様にしますので、
ご希望がありましたら、お気軽にお申し付け下さい。
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