和をたしなむ

2020.07.31更新 - 徒然なるままに

振袖を扱わせて頂ける、きもの屋の幸せ。

 

七五三に続き、振袖のご相談も増えてくる季節です。

 

 

掛からせて頂いているご相談のひとつは、

お母様がお召しになられた振袖を、お嬢様にお見立て替えをすること。

 

最近流行りの「ママ振袖」というものです。

 

 

新型コロナ禍が流行る前、三月初め頃から掛からせて頂いており、

その際にお母様がお持ちになられた、振袖や袋帯たちと対面しました。

 

 

この振袖一式は、祖父がお見立てをさせて頂いたもの。

振袖は別誂えで染めたものだと聞きました。

 

 

20年前とは思えない、鮮やかで現代的な雰囲気を感じる、

エメラルドグリーンの地色に染め上げ、その柄付けはしっかりとした京友禅の仕事。

 

 

身頃だけでなく、衽から衿、各袖まで、

細かで、晴れやかな手刺繍が施された逸品。

 

 

見ているだけで、惚れ惚れとし、当時の仕事の凄みを感じています。

 

 

こちらをお見立てされた祖母様もご一緒にお越し下さり、

当時の想いで話に華が咲く事も、

代々、商いをさせて頂いている着物専門店ならではのことです。

 

 

「新しい振袖の仕事でなくてごめんね。」

 

と、祖母様が仰ってくださいましたが、

正直なところ、きもの屋としては確かにその通り。

 

仕事が減り、職人が減っている今、

一着でも多く仕事を出すために新しい一着を買って頂く努力を、

最大限にする事が商いの務めならば私は落第なのですが、

ご覧の通り、素晴らしい仕事がされた一着を前にすると、

この晴れ着を今の時代に即し、またお嬢様がお似合いになる様に、

精一杯のことをさせて頂く事も、

代々商わせて頂いている着物専門店の務めなのだと、

祖母様や母様、お嬢様の笑顔を見てひしひしと感じています。

 

 

ハレの日を彩る衣裳を扱い、それを任せて頂けることは、

きもの屋として何よりも嬉しい事であり、一層の責任を感じる仕事です。

 

 

当店が得意としている、紬や小紋などの普段着着物とは違う、

喜びと責任感を感じ、それが仕事の励みになります。

 

 

振袖を扱わせて頂ける、きもの屋の幸せ。

 

 

噛み締めながら、しっかりと仕事をしていきたいと思います。

 

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