成長と共に末永く愛される一着になります様に。「産着(初着)の誂えとは。」
時節柄、
七五三のご相談が増えているのですが、
今日は七五三ではなく、「産着(初着)」のこと。
といっても、
遠からず近からずの未来には、
七五三へと繋がっていきますし、
そもそも七五三は、
お子様の成長と家族の節目を祝うこと。
私の中では、
七五三は産着から始まっています。
今日、ご相談をお受けし、
お仕事をお承りさせて頂いたご家族様は、
9月にお嬢様がお生まれになった方。
最初は、
「レンタルってどうですか?」
というご相談から始まり、
以前、コラムでも書きました、
七五三の意味をお伝えしたところ、
「娘の為に一着誂えたいので、相談に乗って下さい。」
とのお返事を頂き、
嬉しくも、気を引き締めて、
今回のお仕事に掛からせて頂きました。
まず、お好みなどをお伺いをし、
ご予算などもお聞きしながら、
産着の上着と長襦袢を決定。
とても愛らしく、また他にはない、
素敵な一反をお選びになりました。
薬玉のなかにある、とある花は、
生まれたばかりのお嬢様のお名前と同じもの。
地色や柄の雰囲気と相まり、
想いが籠った一反となりました。
一反が決まり、ほっとするのもつかの間、
ここからはピッチをあげなくてはいけません。
七五三や成人式は、
あらかじめ行う日取りが分かっていますが、
お宮参りとなると、30日前後が通例。
最近は、あまりそれには拘らず、
産後間もないお母様の体調も気にしながら、
気候が良い時を見計らって行いますが、
それでも、ゆっくりしている訳にはいきません。
仕立ての段取りをするとともに、
上着の裏地「八掛」の準備に掛かります。
初衣という事もあり、おめでたい事もあり、
また誂えの良さを活かすために、
産着の八掛は別染にしています。
反物の巻の奥から、端を切り取り、
その布を付けて、
信頼のおける染屋に染め出しをします。
八掛なので、別色や、
柄の中から一色を取っても良いのですが、
誂えらしい良さを出すためには、
表地と同色が品格を備えてくれます。
別染は日にちを掛けた方が、
より良いものが染め上がるのですが、
当店がお願いをしているところは、
こうした事情も踏まえた上で、
最短かつ最良の染をして下さるので、
本当に有難い事。
染め上がるまでに、
仕立て屋との打ち合わせと段取りを整え、
すぐに仕立てに掛かれる様にしておきます。
お子様にとっての初衣が、
長着や長襦袢から始まり、八掛や仕立てまで、
多くの職人の手を渡っていき、
恐らくそれぞれの職人たちが、
おめでたい一着に関われる事を心から喜び、
精一杯の仕事をしてくれる事でしょう。
そのどれもに不備や失礼がなく、
すべてが思い出深い一着となる様に、
節目のその時まで気を抜かず、
きもの屋としての仕事に努めたいと思います。
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