有松・鳴海絞を誂える。
毎年、季節の変わり目になると、その季節にあった着物を選び、
手持ちのものを仕立て変えたり、新しい反物を誂えたりします。
私は着物がファッションの選択肢のひとつだと思っていますし、
だからこそ、着物屋のひとりとして、値段の高下を問わず、
自分に合ったものや、スタイルに合ったもの一反を選びたいというもの。
いつも色々と楽しみながら悩み、そんな一着を選んでいます♪
今夏の準備も、ほぼ完了。
今年は、愛知県の問屋さまが持って来て下さった、
「有松・鳴海絞」を、自分のために誂える事にしました。
有松絞は、愛知県のお住いの方はもちろんのこと、
多くの着物ファンや、絞りフリーク憧れの一品。
私的には有松絞単体よりも、
産地を総称する「有松・鳴海絞」の名がしっくりときます。
江戸時代に、東海道筋にある「鳴海宿」のお土産として、
絞りの手拭いが大人気を博したことから始まった、この絞り。
戦後の高度経済成長期には、呉服の需要拡大と共に生産も拡大。
大変に手間のかかる「括り」の仕事を海外へと移行したことが、
良い意味でも悪い意味でも大きな転換期ではないかと、私は思います。
良い意味でいうと、
日本よりも安価な値段で括る事が出来た事により、
より多くの方が絞りの良さを味わう事が出来た事。
悪い意味でいうと、
最も重要であり技術の伝承が難しい「括り」の技術を、
産地に根付かせることを放棄してしまった事だと思います。
あくまでも結果論なので、
どちらが正しいという事は決める事が出来ず、
今の現状を受け止めるしか術はないのですが、
最近の産地の動きとして、
私がとても前向きに応援をしたくなる事は、
絞りを志した若い世代が地元に根付き始めた事、
大きな産地問屋さまが、その動きに反応し、
再度地元での生産に、心を向け始めたことにあります。
確かな技術のある「括り手」の超高齢化が進み、
もしかしたら、技術が伝承されるのは、
今が最後のチャンスかもしれないと思うと、
自分たちの風呂敷の広さでしかありませんが、
着物に携わり、布に携わるひとりとして、
そうした動きを見守りつつ、応援していきたいと思っています。
今回、私が誂える事にした反物も、
そうした「地元」で括りから染色をしたもの。
生地感も、今までのものと違い、
大分、しっかりとしたものになっていました。
横段の絞り柄をどう合わせていくか、
女将と二人、侃侃諤諤の協議♪
仕立て上がりを想像しながら、反物に向かい、合わせていく作業は、
着物らしい楽しみ方・誂えものの楽しみ方のひとつ。
袖を通す事を考える事が愛おしく、待ち遠しく思います。
今回は、実験的な要素も含め、私の個人用のみの取り扱いですが、
ゆくゆくは、当店でも取扱いたいと考えています。
自分で誂えてみて感じたことを率直に伝え、
同じく「本場有松鳴海絞」をお待ちの皆さまと共に、
一着ずつ誂える事で地元の産業を応援することが出来れば、
そして何より、
絞りのファッション性を、自由な心で楽しめればと思います。
仕立て上がりをお楽しみに♪
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