男のきものを嗜む。「卒園式に向かう父親の着物姿」
一昨日は、息子がお世話になっている保育園の卒園式に出席してきました。
とはいえ、息子は来年度もお世話になるので、
在園児の保護者の代表として、祝辞を述べて参りました。
基本、人とお話しするのは好きで、ぶっつけ本番には強い性格なのですが、
立派な壇上に立ち、卒園児・保護者・諸先生方総勢約200名の前で、
お祝いの言葉を述べる事は、あまり経験することがなく、
あがりっぱなしの祝辞となってしまいました(汗)
これも良い経験、また次回機会を頂けたのであれば、
もっと気の利いたことをお話し出来たらと思います^^
そんな私の杞憂はよそに、
式はつつがなく、良い緊張感がある中で無事終え、
まずは何よりのこと。
私は当日、こんな着物のコーディネートで出席をしてきました。
濃緑色の三眠蚕の色無地に、梨地に一つ紋を入れた御召羽織、
角帯は無地の綴れ帯に、白足袋を合わせました。
本来、卒園式のような「式事」や「セレモニー」であれば、
この姿に袴を履いて向かうのが本筋。
ただ、事前情報を聞いたところ、男性はスーツ姿が多いとの事で、
他の方とのバランスを取り、あえて袴を履くのはやめました。
こればかりは気持ちの問題で、
「間違ってなければ、自分が好きなのを着たら良い。」
というのも、確かに間違いのない事なのですが、
私的には、周りとの調和という考えがとても大切な部分で、
それぞれの場所、TPOに合わせて、自分が考える最大限で、
スマートに着物を着たいというところ。
着物だけが浮かず、でも着ているかどうか分からないのではなく、
着物らしい凛とした空気感や良さを知ってもらいたい。
「どんな時も着物がベスト」というのは、今の時代、難しくなってきたと感じています。
という訳で、
袴を履かずとも、出来る限り礼装の心を持ちたいと思い、
またダーク系のスーツの中でも違和感なく、そして着物らしい装いを目指して、
この様な長着&羽織の選択となりました。
シックな雰囲気の中に深みのある色合いの三眠蚕の糸で織り上げた色無地、
一つ紋でしっかりと格のある装いが感じられる、梨地の無地御召の羽織、
付ける羽織紐は、亀甲組のもの、
帯は、祖父から譲り受けた、無地の綴れ織の角帯、
といったコーディネート。
三眠蚕(さんみんさん)の色無地は、染物らしいしっとりした素材感が魅力で、
肩のラインが綺麗に出る事と、重みがあるので、裾がすとんと落ちるのが、
私的のお気に入りポイント。
羽織&羽織紐に関しては、今までも何度か書いたので割愛し、
綴れの角帯は、祖父が大切にしていたものを、
私が勝手に箪笥の引き出しから譲り受けたというもの。
しっかりとした手綴れの織り上がりは、正直なところ、結びにくさがあるのですが、
いつもよりゆっくりと時間をかけ、きちんと結びあがると、
他の帯では味わえない安定感がこの帯にはあります。
この安定感が、綴れ帯の魅力。
最近は織り手の減少もあり見かける事も少なく、また高価なものになりましたが、
礼装などに用がある皆様には、ぜひ味わってもらいたい、結び心地です。
といった、卒園式に向かう、私なりのスタイル。
これが正解ではなく、それぞれが向かう場所やそのTPOに合わせて、
それぞれに最善のものがあるという事が、
「着物って難しい。」
ってところに繋がりかねないのですが、
このTPOを考えるという事は洋装でも同じことで、
相手に失礼の無い様に、自分の想いを込められる様に、という心遣いが、
選択をする楽しさに繋がると、私は思います。
そして、あまり考え過ぎない事。
答えはなく、またシンプルな想いで着物を着る事が、
何より相手に想いが伝わり、自分が楽しめます。
着物が一層楽しく、
どなたにとってもファッションの選択肢として、
自由な心で選び、楽しめるもので在ります様に。
春の着物シーズンを、お気に入りと一枚と共にお過ごしくださいませ。
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