男のきものを嗜む。「織り手の想いを着ながら感じる。~登喜蔵ずり出し紬~」
今年の新年から着初め、約1年間袖を通してきた、
私の今冬一のお気に入りの一着。
「登喜蔵」さんのずり出し紬を、ご紹介したいと思います。
一昨年の3月、当店にて個展をさせて頂いた、
京都丹後にて草木染とずり出し技法にて創作をされている、
11代目「登喜蔵」さん。
その時に、自分のためにと想い、
購入をさせて頂いた一反を仕立てがものが、この一着です。
個店の様子などはこちら(当店ブログ)→心のままに自然を織り上げる。
誂えたのが丁度、単衣に向かう季節という事もあり、
また昨年の年末年始は私の着姿以外に、ご紹介する事も多く、
誂えてから約1年が経ってからのご紹介は珍しい部類なのですが、
着続けたからこそ感じたこと、分かったことを、未来に向けて想うことを、
私なりにまとめてみたいと思います。
今まで、色々な着物の生地を仕立て、日々袖を通してきました。
その多くは産地に足を運び、直接物作りをされている方とお話しをし、
その中で「物惚れ」をしては「自分でも着てみたい!」と思い、
意中の一反を手に取り、誂えてきたのですが、
この登喜蔵さんの一着は、その思いが一層強いのか、
また物惚れだけでなく「人惚れ」をしているのか、
着ているだけで、氏の想いやお人柄を「そのまま」、
着ているかのような感覚をおぼえます。
「登喜蔵」さんがそのまま、反物になっている感覚です。
個展を行った際、数ある反物を手に取り、
ずり出しと草木染が持つ力を、「柔らかさ」「優しさ」として、
私なりに解釈をしていたのですが、
実際に誂え、袖を通してみるとそれとは裏腹で、
「力強さ」や「逞しさ」を感じる一着に仕立て上がりました。
それはあくまでも私の主観であって、
登喜蔵さんとの会話や想いも相まり、その様に感じるだけかも知れませんが、
「自ら山に登り、草木を摘み、ひとつひとつの命から色を染め出し、
一段一段、ありのままの想いを込めて織り上げていく。」
という登喜蔵さんが行う自然や糸、機織りに向かう工程の中で、
そうした想いや強さが、織り上がりの印象に成っているのだと、
着ながらにして思っています。
登喜蔵さんからは、「単衣で」とも言われましたが、
袷の触感が好きな私は、裏地を付けて仕立てをしました。
大好きな一着になる事は分かっていたので、
遊び心のあるものを付けました。
個店の時、登喜蔵さんとの何気ない会話のなかであった車の話や、
ご紹介いただいた男性のお客様との車の会話が思い浮かびます♪
手織のものや、草木染のものは、
使い込み、着こんでいくごとに、その表情や質感が変わっていき、
それが生地の持つ本来の力や、本来の質感を感じる事に繋がります。
着始めのジーンズが段々とこなれ、最高に履きやすい一足になる様に、
この一着も、私と共に月日を重ね、色々な場面で着ていき、
汚れては洗い、裏地を交換し、時には単衣に仕立てる事も経ながら、
何十年かののちには、離れられない一枚の布になるのだと、
生地に向かい、袖を通していると確信に満ちたことを感じることが出来、
今はそれが楽しみで仕方ありません。
一生付き合えるものと出会えた事に、心から感謝をして。
コーディネートのご紹介などで、これから度々登場すると思いますので、
どうぞ、皆さまもお見知りおき下さいませ♪
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