「誂える」楽しみ。
桜満開の終わりが見え始め、そろそろ夏衣のご紹介が始まる頃ですが、
それの前に美濃幸では、秋冬の袷の注文と別注が進んでいます。
コロナウィルス禍による甚大の影響から、どうしても買い控えしがちですが、
こうした時こそ、出来る限り問屋さんにもメーカーさんにも注文を掛けたいのが心情!
そして、どうせ注文をするのであれば、より「美濃幸らしい」ものをと思い、
それならば!と色柄や生地を選ぶ「別注」「誂え品」をお願いするようにしています。
私が誂えを始める様になって3年程が経ち、
段々とコツや押さえ処が分かってきて、
最近では「どのような注文をしようか?」とそれをするのが楽しみのひとつ。
先週も懇意にしている京都の老舗問屋「千切屋」さんが、
名古屋まで持ってきてくださった秋冬の新作の反物たちを前に、
誂えの注文をお願いしました。
ベースになったのは、こちらの附下。
淡く良い色のちりめん生地に、細やかな手刺繍が施された附下。
この一品でも十分に魅力的ですが、
ご存じの方も多い通り、美濃幸はカジュアル傾向の店なので、
これでは少し、フォーマル傾向が強目になります。
地色の雰囲気、刺繍の細やかな美しさ、それを活かしつつも、
美濃幸らしい一品に仕上げていくために、
千切屋さんとあれこれ言いながら最終案を作り上げていきます。
「誂えや別注って高いんでしょ?」
と、ご来店のお客さまからは質問をされるのですが、
私が知る限り、私が注文する限りであれば、
元の反物と同じくらいに仕上がるので、
特段の「別注代」というものが別に掛かる事はありません。
反対に、私が思う予算に合わせて柄を足し引きすることで、
そこでお値段を調整する事も可能。
染物のお値段の違いは柄の多少が大きく関わるので、
図案や原反をもとに、好みのものに仕上げていく事が出来ますので、
「誂えをしたから値段が跳ね上がる。」
という事は無いように思います。
(※あくまでも美濃幸で誂えをお願いした場合)
皆さまが好みの一着をお求めになり、別注(誂え)をする時の、
絶対の注意点といえばただひとつ、
「相手を信頼し、お任せする事。」
に尽きる様に思います。
相手というのは、窓口となる小売店が一番であり、
その仕事をして下さる職先さんです。
とはいえ、職先さんは皆さまからは見えずらいので、
小売店選びが一番大切かと思います。
繊細な染色の場合、
見本の色と同じ色になる事は、ほぼ100%ありえません。
それは染の技術の問題ではなく、
同じ染料を使ったとしても、生地の様子によって、また気候によって、
発色や見え方というものが変わっていくからです。
また柄においても同じことで、
同じ柄と言っても、生地風によって見え方は大きく変わる事もあるので、
誂える時、別注する時の注意点。
そうした事も踏まえて、お願いする相手、
私の場合は問屋さんを信頼し、お任せする事が大切であり、
自分の意思や意図を伝えつつ、
それをどの様に解釈し、仕上げてくれるかを待つことも、
誂えや別注をする楽しみだと私は思います。
あとひとつ、
「時間は余裕を持って!」。
焦らせるとせっかくの仕事にも落ちがつくこともありますので、
皆さまがお願いする時は、速くて半年、1年くらいの余裕をもって、
誂えをお願いすると良いと思います。
着物が大多数ではなく、限られたコミュニティーでの、
自分らしいお洒落となりつつある現代。
人と違うものを求めるというよりも、
「自分らしいもの」を求める傾向が強い様に思います。
きものがそうした皆さまのお役に立ち、
自分らしく過ごせるお洒落で在ります様に。
別注のご注文は大歓迎ですのでいつでもご相談下さいませ!
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