女将の着姿。「お悔やみの席に向かう着物姿」
二月に入り、お悔やみの席に関してのお問合わせが続いています。
時節柄という事もあるかと思いますが、
HPやブログから、頼りにして頂けるご新規の方が多く、
着物屋として嬉しくも、しっかりとした見解を示さなければという、
責任感も感じています。
基本、それぞれの状況をしっかりとお聴きした上で、
当店の見解をお話しさせて頂きました。
そして、
いつもはハレの席や気軽な着姿を、
ご紹介していた女将の着姿。
華やかなものではないので、どうするのか悩んでもいましたが、
着物屋としての見解を示すであろう「いずれの時には」と、
昨年撮っていた「お通夜に向かう着姿」を、今日はご紹介したいと思います。
唐花の地模様がある深紫色の色無地に灰黒の織九寸名古屋帯、
帯〆は白黒の平組の物に、帯揚げは黒の物を合わせていました。
「お通夜の着物」というと、
「色無地に黒共(黒喪)帯の組み合わせ」という姿が、
定番の一つになっていますが、
ここ何年かの間に、何回かお通夜に伺い、その姿を拝見していると、
帯の黒が強く、どんな色の色無地を合わせても、
帯が浮いて見える印象を感じていました。
何気ない事ですが、黒紋付き(喪服)の「黒」の力は絶大で、
それに合わせるために織り上げた漆黒の黒共帯も、同じく力強いもの。
「黒共は喪服専用の帯なんだ。」と、
当たり前の事ですが、自分ながらに感じていました。
お悔やみは、あくまでも「気持ち」が大切。
黒の取り合わせや力強さなど、
それに比べればどうでも良い事かも知れませんが、
恐らく、このブログをご覧の皆さまは、着物に関心があり、想いがあり、
「着物を着る時はベストで在りたい。」
と思われている方が多いはず。
そうした方には是非、
お通夜用の帯を一本持たれる事をおすすめしています。
お通夜に向く帯は、写真の女将が結んでいる様なものから、
灰色に模様が織り込まれたものや、黒色の塩瀬九寸などがあります。
女将が結んでいるものは、洛風林さんの九寸。
蔓に鳥の柄が織り込まれたものです。
灰黒の濃淡で織り上げてあり、あくまでも法事用のものですが、
色のメリハリと織の表情があるもので、
法事らしい落ち着いた雰囲気と、黒共にはない風情があります。
帯〆と帯揚げはこちら。
帯〆は白黒の織り分けのもの。
多分、渡敬さんのものだと思います。
帯揚げは黒のもの。
こちらは喪服用のものを使っていますが、全体に「黒」を使わないコーデなので、
ここだけ喪としての凛とした雰囲気を感じる事が出来ます。
この様な雰囲気で、いつも法事やお通夜に向かう女将。
礼式や礼服への価値観や、それ以外の価値観そのものが変わり、
「喪服が当たり前」だった時代はもう過去のものだと、私は思っています。
このコラムでも何度か書いていますが、
礼装の着物は「相手を想う衣装」であり、
喪の席に限れば、故人と本人との関係やその想いにより、
袖を通す着物や心持ちも変わり、
もしかしたら、着物が当たり前の方にとっても、
着物よりも洋服の方が相応しい事も、いくらでもあり得る事だと思います。
なので、「これが正解!」というものは無く、
着物屋としての見解を示すことが出来ず、申し訳ない部分もあるのですが、
故人とのお別れのひとときが、それぞれの皆さまにとって、
衣装と共に想いを伝える、かけがえのないひとときに成ります様に。
それでもご不安の時は、精一杯相談に乗らせて頂きますので、
どうぞお気軽にお問い合わせ下さいませ。
- 2025.03.13 3月15日(土)~22日(土) 二年に一度の蔵出し市 開催します。
- 2025.03.01 2025年3月の定休日・和のコト教室(着付・茶道)開催日のご案内。
- 2025.02.17 2月20日(木)~25日(火) きものリメイクご相談会 開催します。