春~初夏単衣を心地よく楽しむ。「矢代仁 楊柳シケ引き色無地×高久空・木 塩瀬九寸名古屋帯」
段々と平均気温が高くなり、
このコラムをご覧下さっている皆さまには、
夏物が待ち遠しいお客様もきっと多いのではと思いますが、
今日は一息つきまして、春~初夏単衣コーデをご紹介します。
楊柳ボカシ染め色無地 × 高久空・木 塩瀬名古屋帯「菖蒲」
春から初夏にかけての単衣季節に相応しい、
軽やかで爽やかな色に染め上げた楊柳生地の色無地と、
この頃に季節感溢れる、高久空・木氏の塩瀬九寸名古屋帯です。
十数年前、また一昔前であれば、
どこでも当たり前に販売がされていた「楊柳」の色無地ですが、
最近は問屋に行ってもほとんど見かけず、貴重な単衣用の生地となりました。
楊柳(ようりゅう)とは、
緯糸に強撚糸を使う事で、生地に縦方向のシボを出したもので、
「単衣と言えば・・・」の生地として、着物だけでなく半衿などにも使われます。
こちらの一品は、その楊柳生地を染め上げた色無地で、
シケ引き染で淡いボカシを染めたもの。
楊柳の縦方向のシボとシケ引きの色の取り合わせ、
また地模様にある小さな水玉がアクセントとなり、
爽やかな水の流れの様な雰囲気で染めあがっていますし、
今からの強くなる太陽の下で、一層美しく映える色使いになっています。
明るめのボカシ色なので、色無地と言えど不祝儀には向きませんが、
反対に小紋風に着こなす事も出来るので、帯次第で幅広いTPOにお召し頂けます。
合わせた帯は、今回は季節感溢れる「菖蒲」の柄。
当店でもお馴染み、高久空・木氏の蝋纈染の一品を合わせてみました。
蝋纈染らしい色際が、糸目友禅の様な写実性とは違う「濃淡」に美しさがあり、
それがかえって写実性が高まっている印象。
染帯の魅力を存分に味わって頂ける、そんな染め上がりになっています。
帯〆は何色を挿そうか色々と迷ったのですが、
単衣らしい季節感を味わって頂きたく、また水の流れを意識して、
渡敬さん観世組の水色のものを合わせました。
最近は気候的にも心理的にも、単衣の季節が長くなった印象で、
今時分にお召しになるお客様からは、
「もう単衣って着ても良いのかな?」
「何時頃から単衣って着ても良いの??」
というご相談を多く承ります。
私なりの結論から言うと、
「自分のお洒落の為の装いであれば、気候や体調に合わせて着物を選ぶ。」
です。
先週のゴールデンウィーク、私は歌舞伎座に観劇に行きましたが、
その際に着ていたきものは、単衣の米沢御召と紗の羽織というもの。
最高気温が30度にもなろうかという日に、
袷のコーディネートを着る事こそナンセンスだと、私は思います。
もちろん、結婚式やセレモニーなど、相手の為に着る着物の場合は、
しきたりやドレスコードを守る事で着物を着る意味を成されるので、
それなりに考えて装いを選ぶ事が必要があり、その心を大切にすべきと思います。
着物が文化的な側面からファッション的な側面が強くなる今の傾向からいくと、
いずれは風習が変わっていく可能性もあるのかなと、感じています。
日本人らしい「ルールを重んじる」感性も時には大切になりますが、
TPOを考えながら、自分らしい装いを楽しむ事が、
着物と善き関係を築く一歩かと思います。
着物の色、和の色が映えるこれからの季節。
皆様にとって素敵な季節となります様に。
《掲載商品詳細》
矢代仁製 楊柳単衣向き色無地 137,000円(税別・反物価格)
高久空・木作 塩瀬九寸名古屋帯「菖蒲」 170,000円(税別・反物価格)
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