和をたしなむ

2017.04.12更新 - 徒然なるままに

葛布の光沢感と透明感。「4/20・21・22開催 大井川葛布展~古代布の源流に触れる~」

 

4月20日(木)・21日(金)・22日(土)、

大井川葛布展~古代布の源流に触れる~」を開催します。

 

 

前回のコラム「葛布について 」の続きです。

 

 

私が感じる、葛布の最大の特徴は、

生地の軽さと共にある「光沢感」と「透明感」だと思います。

 

絹とは違う、また、他の古代布にはない自然な光沢感は、

天然の繊維から、どうして出てくるのか不思議でした。

 

 

今回のコラムでは、そのあたりを中心に、

葛布の作り方」を書いていきます。

 

 

葛布の原料である「」といえば、

その根を乾燥させて作る「葛粉」と同じと思っていたのですが、

同じ葛でも自生する場所が違う、性質が違う葛だそうです。

 

葛粉」に使う葛は、

木に巻き付き、縦に伸びるもの。

 

葛布」につかう葛は、

土手に生え、横に伸びるもの。

 

です。

 

 

葛布にするには繊維が柔らかい事が必須で、

そのためには重力に逆らわず、地面に伸びていくものが向いており、

その事もあって自家栽培をする事は難しい(チャレンジはしたそうです)ので、

季節になると工房総出で川の土手に行き、葛を刈り取るそうです。

 

 

その時期は、梅雨明けの7~8月頃。

 

それを聞くだけ、ご苦労が身にしみます。

 

 

その刈り取った葛とまとめ、お湯で煮だし、

そのものを発酵させるために、ススキの「」に入れます。

 

 

煮たてて、発酵させることにより、硬い表皮が溶ける様になって、

光沢感のある糸を作るには必要な工程。

 

今回は、使い終わった室を見る事が出来ました。

 

 

 

この室の中で2~3日発酵させ、

その後、綺麗な川に行き、表皮を洗いとります。

 

そして、丁寧に中の芯を取り乾燥させたものが、下の写真の「葛苧」。

 

 

 

 

写真でも少しは伝わるはず、柔らかな光沢感と透明感がそこに在ります。

 

 

大井川葛布の代表、村井さんからお聞きすると、

光沢感溢れる葛布を作るにはこの、「発酵~洗い」の工程が大切だそうで、

ただ、川の水質悪化により綺麗な葛苧を作る事が困難になっているそうです。

 

水道水で洗うと光沢感は失せ全く物にならず、

とはいえ、汚れた水の川では同じく光沢感が出ない。

 

 

今では、まだ綺麗な上流まで発酵したものを持って行き、

そこで水洗の作業をしているそうです。

 

 

自然環境の悪化が、古き善きものを駆逐してしまう事は、

往々にしてあることかも知れませんが、

 

今回の大井川葛布の様に、

自分により身近なところで起きている事を知ると身につまされるものがあり、

今の自分たちの生活そのものを改めて考えるきっかけにもなります。

 

 

大きな苦労なく、より良いものが作れる環境が、

各地に出来る様な日本になればと、切に願います。

 

 

こうした工程を経て出来た葛苧を裂き糸状にして、

その糸を繋ぎ、八の字に巻いたものが「葛つぐり」。

 

それを色々な染料で染めたりして、緯糸に使います。

 

工房で拝見出来たものは、丁子で染めたもの。

 

 

 

 

染めると一層光沢感が増す様に感じます。

 

大井川葛布は本来、経糸は木綿(和綿)の糸だったとの事。

 

村井さんの所ではそれを再現するために工房の庭先で和綿の栽培もされており、

年に数反分の木綿糸を採っていました。

 

 

 

今では経に絹糸を使う事も多いそうですが、

村井さんご本人は、代々受け継がれてきた「葛布の伝統」を、

出来る限り護り伝える事に使命を感じておられ、

 

そうした真摯な物つくりに賭けるご姿勢が、

多くの方の心を打つ「大井川葛布」の製品になっていると、

今回の工房見学で感じる事が出来ました。

 

 

来週の展示会期間中も、

そんな葛布の魅力を大いに感じて頂く機会になれば、

 

また、それを知ることにより、

次の世代にも「古代布の魅力」繋げることが出来ればと思います。

 

展示会のご案内→大井川葛布展「古代布の源流に触れる」開催します。

 

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