職人の手仕事の魅力を感じ、伝えること。「小千谷縮 マンガン絣」
昨日のコラムでコーディネート紹介をしました、「生成り絣柄の小千谷縮」
コラムではコーディネート紹介と、藍色についてを書きましたが、
実はこの小千谷縮は「絣柄」であっても、「絣織」の反物ではありません。
そう、織で絣柄を表現しているのではなく、「染」で表現をしている一品。
一見したらまったくわからないのですが、
その反端を見ると、
「本場 小千谷ちぢみ」という文字は横絣で織り上げてあるのですが、
絣柄がその上に乗っている事が分かると思います。
これは、織った後に絣柄を染めた証拠。
仕立ててしまえば、この反端も切ってしまうので、
誂えてしまえば、ほぼ総絣の小千谷縮に見える一着になります。
この絣染の技法は、「マンガン絣(染)」と呼ばれるもので、
大正時代に発明された捺染技法です。
この説明をしようとすると、織物の仔細に触れる事になるのですが、
織物は、織の作業よりも糸を準備する工程~作業が大変で、
糸染~整経までの作業が全行程の手間のほとんどを占めていると言っても、
決して過言ではありません。
ギッタンバッタンと、織手さんが機に向かっている姿を見ると、
それが最も大変な仕事の様に見えますが、
(もちろん!機織りの上手い下手はあり、素人は簡単には織れません!!)
糸づくりや、段取りつくりが、織物の大切な仕事になります。
それに加えて絣織は、糸染の工程で絣柄を染めなければならず、
経緯(たてよこ)絣の織物はその名の通り、
経糸・緯糸どちらもそれをしなければ、一反の柄が織り上がらない訳です。
そうした工程の手間を簡略化し、
染技法で同様の雰囲気を出したものが、この「マンガン絣」。
絣織の簡略版には変わりないのですが、
この柄を染め上げるのには職人の手仕事と、その感覚があってこそのもの。
「染」と「織」の違いはあれど、手仕事の美しさを感じる仕上がりです。
作業工程の詳細は、何度か問屋さんから聞いたのですが、
恥ずかしながらも、最後まで納得は出来ず(汗)
酸化マンガンを使って染めるので「マンガン絣」という所だけは、
しっかりと納得ができました(笑)
ネットで調べてみると、
マンガン絣をされている、新潟県染織試験場のサイトもありますので、
ご興味のある方は検索してみて下さい。
着物にまつわる染織技法は深遠かつ、知識量も莫大で、
私たち着物屋も日々産地を見学したり、
そのものを扱う問屋さんと話をする中で勉強をしています。
時にはお客様の方がお詳しい事もあり、
そうした皆さまとの着物談義に華が咲いたり、
逆にご教授願う事もあります。
私は知的好奇心の琴線に触れるものが好きで、
そうした勉強をするのは大好き。
こうして一品毎と日々向き合い、知識の深みを持つ事が出来たら、
私にとっては何よりも嬉しく楽しい事であり、
この様なスタイルの着物屋がさせて頂く事が叶い、
本当に有難いことだと常々感じています。
着物屋としての最低限の礼儀として、店に置く一品の事はどれも深く知り、
それとご縁のあった皆さまに、ものの想いを込めて正確に伝える事が大切。
好きこそものの上手なれに倣い、
ものの良さや、職人の手仕事の美しさを、
正しく伝える事が出来る着物屋で在りたいと思います。
《 掲載商品詳細 》
小千谷縮 マンガン絣(麻100%) 70,000円(税別・反物価格)
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