10月の歌舞伎座、想いを込めた結城紬と洛風林の帯で。
先日、オープンと同時にお客様がお越しになり、
お着付とお支度のお仕事を頂きました。
祖母様の頃からお世話になっているお客様で、
その方がお生まれになった頃から良く知っている女将が、
一昨日あたりから準備を整えていました。
こうした末永きお付き合いをさせて頂ける事は、
街の着物屋ならではの喜びだと思います。
今月の歌舞伎座で開催中、
中村勘三郎さんの七回忌追善公演を楽しまれるとのこと。
歌舞伎初心者の私も、以前からネットでチェックをしており、
行きたくてしかたない素晴らしい演目と役者さんが広げる舞台。
きっと心から楽しまれることでしょう。
そんな、素晴らしい会に向かわれる着姿はこちら。
全身はやめてー!!
との事で、一番素敵で、またお客様が拘られた、
帯まわりをご紹介します。
こっくりとした深みのある結城紬の無地に、
洛風林の袋帯をコーディネートし、帯〆と帯留で秋色を挿されています。
こちらの結城紬は、
お母様がお召になっておられたものを染め直し、
裏地も共に染めて誂えなおしたもの。
解いて染め直しをするので、
生地の地風も柔らかで肌さわりが良くなり、
縫い糸も新しくなるので、もうひと時代、楽しみにお召し頂ける事と思います。
洛風林の帯は、お客様が一目惚れをされた袋帯。
シックな地色の太鼓柄とシンプルですが、
シンプルだからこそ極まる美しさが在る一本です。
何を着て行こうか、どの長着とどの帯を合わせようか、
直前まで迷われていたのですが、
10月の歌舞伎座とお聞きした時点で、
「絶対これにしましょう!」とお勧めした、間違いなく素敵なコーディネート。
今月の歌舞伎座(特に夜の部)は、華やかな演目という事もあり、
秋色たっぷりのコーディネートもきっと馴染むかと思いますが、
副題にある、「中村勘三郎追善」を考えると、
少し色のトーンをおとし、シックな装いの方が、
会場の雰囲気に向くのではと、私は思います。
着物と帯の色はおとした分、お太鼓の品のある豪華さと、
帯〆や帯留の色の取り合わせや、振りから覗く朱赤の色が、
女性らしさと季節感を感じさせてくれます。
たかが観劇、されども観劇。
もちろん、どんな衣裳で行かれても個人の好みの問題なので、
誰が文句を言う必要もなく、そうすること自体野暮なことですが、
着物屋としてご相談を受けた以上、
出来る限り、観劇も雰囲気も着物もどれもが一緒になって楽しめるものを、
ご提案したいと思っていますし、
そうした楽しみが出来る事も、歌舞伎の楽しみのうちだと思います。
この歌舞伎座も、ご当地御園座の顔見世も、明日が千穐楽。
皆さまが自分らしく楽しめる衣装とともに、
夢のような時間をお楽しみ下さいませ♪
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