和をたしなむ

2026.02.07更新 - 店紹介

ものづくりの真髄を、誂え附下の作業現場から。〜その1 アウトラインを作り込む〜

 

 

私がコラムなどで書き記す文章にはよく、

 

「美濃幸好み」

 

という言葉が登場します。

 

 

 

きもの美濃幸らしいもの、自分自身が好みのものが、

ご覧下さる皆さまに端的に伝わる言葉として重宝に使っていますが、

これはただ単に今在る商品のなかから好きなものを選んだだけではなく、

好みのものを創り上げていく事に本意と願望があり、

そのものづくりの真髄をご縁あった皆さまにお楽しみいただきたいと考えています。

 

 

 

ものが溢れている現代。

 

 

ものづくりが厳しい和装業界にあっても、

これだけSNSが発達していると個店の個性は表しにくく、

出来るだけきもの美濃幸の事を知っていただきたいという想いから、

自分が気に入り、自信をもってお勧めしたい一品を、

日々制作しております。

 

 

 

今日は私が日々行っている作業現場をご紹介するなかから、

どの様に美濃幸好みを創り上げているのかを知ってもらえたらと思っています。

 

 

 

 

さて、今回は附下を誂えることにしました。

 

 

春先に向けての入卒式では、

お子様の門出を祝う一着をとお求めになられる方がおられ、

昨年末あたりからそういったご相談が増えてきております。

 

 

自分が子どもだった頃、母親が着物を着る事が当たり前だった世相とは違い、

今は洋装で出席される方がほとんど。

 

私の感覚では、和装でその時を迎えられる親御さんは、

1割程度という感覚です。

 

 

それでも、自分らしい一着を、また洋装の中に在っても違和感なく、

和装の良さを感じられるものをお求めになられるお客様はおられ、

昨年までにそういったご要望に見合う一反はお見分けした事もあり、

新たな美濃幸好みの附下を誂えようという事になりました。

 

 

 

 

「誂え」「別注」というと、

かなりハードルが高い仕事の様に感じます。

 

確かにゼロから誂えようと思うと、

図案から考えていかなければならないので、

時間も手間も掛かりますが、

 

今回はすでに染め上がっている附下を基に、

それをアレンジしながら美濃幸好みを創り上げていく事にします。

 

 

 

過日、京友禅の名店である染の川勝さんの新作発表にて出会った一反がこちら。

 

 

 

 

こっくりと深い色目で染め上げ、

そこに雰囲気がとても好みな矢羽根が配され、

その間には丁寧な染め分けのぼかしがなされた一反。

 

 

かなり手の込んだ逸品で、

付下げというよりも、訪問着に近いくらいの柄の分量と、

豪華さ、品格を兼ね備えた一反です。

 

 

 

 

 

ただ、これを入卒式の一着としておすすめするには、

まず色目が玄人好みの染め上がりであり、

また柄の分量も多い印象を受けます。

 

 

 

色無地とは言わずとも、華やかさを演出してくれる柄付けは欲しく、

かといって主役を奪うような豪華さは要らない。

 

 

そういった構想をもちながら、

この染め上がり、また制作された染屋さんが大切にされている雰囲気を壊さずに、

柄の分量や配置を調整していきます。

 

 

 

 

柄やぼかしを手で隠しながらどれをどの様に削ぎ落とし、

バランスを取ったら良いかを判断します。

 

 

 

 

なくしてしまうと、バランスが崩れてしまうので、

大体の目安だけを付けて、大きさなどの考えていきます。

 

 

 

 

また、ぼかし染も手間がかかるので、

今回は省くことにしました。

 

 

後ほど解説をしますが、

地色も薄色に寄せていくため、

この綺麗なぼかし染が意味をなさなくなるという考えもあります。

 

 

 

次に色の粗選びをします。

 

 

 

 

春先にお召しになる事を想定して、

桜色に近いピンク系も考えつつも、

自身が良いと思うだけでなく最近のトレンドも考慮しながら、

また美濃幸を頼りにして下さるお客様の傾向も考えて選んでいきます。

 

 

 

 

若いからと言ってピンク色や赤色をお召しになる時代ではないのと、

洋装の中に在っても馴染む色目を求めていきます。

 

 

 

 

ちなみに当店ではカラーチャートは使わず、

正絹生地を染色した色見本を使用します。

 

 

色無地を誂える時、また八掛を別染めする際にも使用する長年使い込んだ一冊ばかりで、

ご覧の通り、色の一部は染屋さんに見本として出すために切り取った跡があります。

 

 

切り取られた色は、今までに染め上げてきた証。

 

見た目は悪くなっていますが、

私にとっては経験の証でもあり、今も大切に使用しています。

 

 

 

粗選びした色のから数色選び、

そのサンプルを生地の上に置いてみます。

 

 

 

 

こうする事で、

それぞれの色が柄との相性が良いかどうかを判断していきます。

 

 

ただ実感には全体がその色になる訳で、

そこは過去の経験則からイメージを膨らまし、

一番似合う一色を決め込んでいきます。

 

 

 

柄の配置と大きさ、地色の荒選び。

 

ここまでが第一段階であり、誂えの時のアウトラインになります。

 

 

 

この様に自分が考えている事やその想いというものを職先さんに伝え、

それを基に柄を染めるための下絵を描いてもらいます。

 

 

その下絵を基に最終稿を作り込む訳ですが、それは今後の投稿にて。

 

 

 

ただ「売れる」という商品を作ることではなく、

「想い」が伝わり、その想いが着姿にのせてもらえるものづくりを心掛けています。

 

 

 

これからどのような附下が染め上がるのか、

引き続き楽しみにご覧くださいませ。

 

 

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